忍者ブログ
[PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


2024/11/24 02:36 |
Dawn (1) (ビリグラSS) (R18)

Dawn  (1)   (ビリグラ R18)



ビリグラで甘め…? 念の為R18とさせて下さい。
いつものように取りあえず2回に分けてUPです。 長いですorz 
今年最初のSSは時間軸は今くらいになりました。
時間軸がバラバラの更新で申し訳ありません。

つづきから、どうぞです。



****************************************



Dawn  (1)












夜が明け切る前の静寂の中で、ごく僅かに耳の中でキンと張り詰めた音が鳴り響く。

体内の筋肉の収縮だとか骨のそれだとか、血潮の流れだとかが聴こえる、あの静かな一時が好きだ。

その静寂の中で夜が朝に着替え、レディが漆黒の夜着をゆっくりと肩から滑らせて、純白のドレスをそろそろと身に纏うよう、たおやかに静かに空が白み始めるあの一時、

 

傍らにいつも君を感じていた。

 

 

 




 

 

 

まだ余熱の残る肌を持て余し、グラハムは何度か寝返りをうった。

 

体の位置を、向きを変える度にマットレスは律儀にぎしりと音を立てて軋み、夜が明け切る寸前の
静寂の中でその音は良く響いた。だが僅か数センチ隣で眠る友人が起きぬよう、なるべく音が響かぬようにマットレスに手を置き、体を支えるのにもタイミングに気を遣っている自分に苦笑する。

ゆっくりと体を起こし、ベッドヘッドに背中を預けて息を付く。
付いては友人が起きぬようにそろそろとブランケットを手繰り寄せ、下腹を隠した。

軍用アパートメントでは全館共通の空調設備が付いている。手元のリモコンでの温度設定は可能だが集中管理の下、数値を上げてもあまり意味を成さずに天井に埋め込まれたそれは温風とも冷風とも
つかないものを吐き続けているのだ。

故障ではない、ようは節約らしい。
各室で寝静まる者が多いこの時間は流石に温度を下げているらしく、残った夜気にグラハムは裸の肩を僅かに震わせた。

階級差の為にカタギリの部屋はグラハムのそれより僅かにランクは上で、部屋は広く備え付けの家具もシンプルだが幾分高級感に溢れていた。広い室内は温まるのに時間がかかり、また冷えるのも早いが、ベッドがセミダブルなのは非常にありがたかった。

私の部屋に連れ込んでは、きっと立ったまま強いられるだろうな、

とグラハムは苦笑した。
グラハムの部屋のベッドはごく簡易的なシングルサイズで成人男子が二人寝そべるには狭小なのだ。
そして、ベッドサイズの問題以前にグラハムは自室で性の残り香がするのを酷く嫌ったので、情事に及ぶのはカタギリの部屋、と暗黙の了解の内に取り決められていた。

嗚呼、シャツはどうしたろう、それと軍服も、と夜も明け切る寸前の薄闇の中でグラハムは目を凝らしたが、ベッドの脇、床の上で黒く小さな布の塊が捨て置かれているのが見えるだけだった。

「………ッ、」

グラハムは何とも言えぬ気持ちになってがしがしと前髪を乱暴に掻き毟っては、ばふ、と音をさせて勢い良くブランケットへ腕を振り下ろした。

 

 

あれは、私の下着ではないか。

 

 

無限に反復されるように何度も経験したこの瞬間は今更だが、何ともやりきれない気持ちになる。

まぁ詰まるところ、年甲斐も無くグラハムは非常に恥ずかしかったのだ。

そしてその度、隣で眠る友人を、己に無体を働きながらも暢気に眠りこける男を蹴り飛ばしてやりたくなる。

だがグラハムはブランケットに己が拳を加えたその音で、隣で眠り込む友人、カタギリが起きてしまわぬか顔を覗き込んで様子を伺ったが特に変化は無く、その眠りを邪魔した訳でもないようで、
良かった、と不本意ながら安堵した。

それは眠りを妨げてしまう可能性に起因する罪悪感からでは無い。

彼は目を覚ませばきっと、グラハムがその拳を振り下ろした理由を問い詰める。

そしてその行動の起因となった、自分に芽生えたほんの小さな、燻る様な何とも言えない嫌な気持ちの理由を根掘り葉掘り問い詰めて、遂には説明を求められるからだ。

カタギリは非常に意地悪で、グラハムのことを何でも知りたがった。

知りたがる、というのはグラハムがどうしようもなく感情を持て余していて、カタギリを求めたと
しよう、しかしそれに対してカタギリは理由を知りたがっては解説を求めるのだ。
無粋だ、とグラハムは思う。

そしてやはり意地悪なので、まさか今まで寝てきた相手の全員にそれを課しているとも思えないが、穏やかに微笑みながらグラハムに、どうして欲しいの、とその度尋ねた。


 

 

何故僕の所に来るんだい、ねぇ、こんな夜遅くに、

 

 

などとゆったりと謡う様に囁きながら口元に笑みを湛え、しかしその目は笑っておらずギラついた
欲をちらつかせながらグラハムを詰問した。

壁際に、或いは窓にグラハムを押し付け追い詰めて、ゆるゆるとこめかみに口付け、ブロンドの波を食みながらカタギリは嗤って言い募る。

素直に黙って抱けないのかと怒鳴ってやりたがったがそれもカタギリの術中のようで癪に障り、
グラハムはお前が欲しいからだ、と真っ直ぐにその漆黒の瞳を見つめて潔く告げてやってはカタギリを笑ませた。

持て余す感情、沸き上がる想い、そんなものの理由なぞ解らなかった。

その曖昧な感情を、どうしようもなく言葉で無理矢理に当てはめるのならばそれは恋という文字なのだろうが、それ程綺麗で甘やかなものではないとも思っていた。

嗚呼そうだ、

恋と提示されるものは純粋で綺麗で甘く爽やかで、もっと優しくて温かいものだ。

我々のこの行為を、関係を恋心から派生したものだと言うのであれば、それは恋に対する冒涜ではないのか、

こんなに酷く醜くい交わりを恋だ等と………。



 

 

 

 

床で小さく捨て置かれた黒い布の塊、自分の下着を見て酷く醜くて生々しいと思った。

そして僅かに漏れた精の痕が白く乾いて下着を汚しているだろう、とそこまで考えて更に嫌な気持ちになった。

昨夜は荒々しくシャツを剥ぎ取られ、タイを抜き取られ、ボトムも、嗚呼それから下着も剥ぎ取られ、狂おしく求められた。

ここからでは見えぬが下着以外のそれらは、恐らく隣室のソファ辺りに散らかっているだろうか。

酷く生々しくて、滑稽だった。

交わっても何も為さない行為だからこそ、それは余計に。

 

 

こんな醜いものはきっと、恋だとは言えない。

 


 


 

 

 

しかし、グラハムがベッドから身を起こす際の一連の動作に無駄が無く、極めて自然に染み付いたように傍らで眠るカタギリを起こさぬようにと気遣いが出るのは、無限に反復された動作を体が覚えているからだ。

それ程に体を重ね、そしてそれ程グラハムはカタギリを気遣った。

だがカタギリを友人と称し、その上で頑なに友人と自ら意識するのも癖になっている。

定期的に肌を重ねる関係になってどれ程が経過したのか、数えるのも馬鹿馬鹿しくなっていたが、
世間的には恋人と称してしまっても構わない程度には寝ていたはずだ。
互いの休暇と勤務表を把握してはそれに合わせて縫い合わせるようにセックスをしている、その状態をセックスフレンドとも言えるのだが、その即物的な関係に留まらぬほどにカタギリは優しくてグラハムを甘やかすことに熱心だったし、好意を抱いているのを隠そうともしなかった。

あのやに下がった笑顔を見れば一目瞭然で、そしてそれにグラハムはいつも甘えているのだ。

だが、カタギリを自分の恋人だと安易に自覚して意識化でも無意識下でも思ってしまえば最後、不覚にもその響きだけでもう緩みきった思考に支配されてしまいそうで。

だから、恋人などと思えなかった。思わぬようにしていた。肉体関係のある友人だと、そう意識していた。

友人なのに体を重ねている、それこそが滑稽なのだけれども、それでもグラハムは頑なに自己に意識させ続けた。

だがカタギリはまるで恋人にするように、グラハムを優しく抱いて時には酷く求めて、甘く緩みきった顔をしながらも、愛を囁く換わりに熱っぽく言い募った。


 

 

 

――君の中に入りたい、ねぇ、入らせて、

 


 

 

と、宣言したり懇願したりを甘ったるく掠れた声音で繰り返し、身の内にゆっくり押し入って唇を
食んで。

そしてとろとろに脳味噌まで溶け切ったように破顔しては侵入を果たした先、熱く潤んだ体内の感想を語ってグラハムの白い肢体と顔とを更に火照らせ煽った。

君、変態だろう、とグラハムは通常ならばそう吐き捨ててカタギリを拒絶することも出来たのだが、甘く喘がされて最後、解けて長くたゆたう髪を手繰り寄せ、カタギリの首裏に手を回して求めてしまうのだから後の祭りだった。

こんな恥ずかしい男を恋人だと意識してしまえば、自分がどうなるか解らなかった。

今ですら甘えて、非常に不本意だがカタギリを求めて止まないのに、恋人だと認識してしまったら最後、きっと自分はこの恥ずかしい男よりも数段恥ずかしい行動を取る。そんな馬鹿げた己をカタギリの目に晒してしまうかも知れない。

その可能性を捨てきれない限り、どうして恋人などと思えようか。

 




 

 

昨夜のことは、実はあまりよく覚えていない。

下肢に覚えのある倦怠感や、その中に残る鈍い痛み、覚えは無いが、…無いのだが内腿に手をやれば肌にあまり宜しくはなさそうな、カサカサに乾いた体液の成れの果ての感触だのに行き着いて。

まあ、結構な具合に寝たのだな、と漠然と思った。

誰とだなんて愚問だ。

隣を見れば、広く大きな背中をこちらに向けた長身の男がいる。

規則正しい寝息に裸の肩が上下し、その度に絹糸のように艶めいた長く豊かなブラウンの髪が白い
シーツをたゆたう姿は何と絵になることか、と以前は思っていたのだが、見慣れてしまえば何のことは無い、その髪と背中の向こうには己に無体を働き男前も半減した、やに下がった男の顔が有るだけだ。

しかも自分ばかりすっきりとした、やけに清々しい顔をした、ふてぶてしくもある寝顔になっているだろうことなぞ、わざわざ検分せずともグラハムは解りきっていた。

だがいつの間にかカタギリの寝顔というものも存分に見飽きてしまい、憎たらしさも無くなった。

こちらは大変なリスクと身体的苦痛をも伴って、受け入れてやっているというのに何と幸せそうな、全くもって腹立たしい寝顔を晒しているのかと、昔は痛む腰に目が覚めては間近に見るそれに大層腹が立ったものだ。

 

 

……人の気も知らないで、

 

 

とグラハムは過去には、その幸せそうなカタギリの寝顔が癪に障って、鼻先を摘み上げてやったり、無闇に髪を引っ張り上げたりとその度悪戯を加えていたのだが、長い腕が宥めるように回されその胸に抱き込まれてしまえば何もできなくなってしまっていた。

そしてその胸の居心地の良さに嗚呼、大概自分も馬鹿者だなとグラハムは自嘲するのだ。

肌を重ねてごくごく最初の頃はそのような甘ったるい時を、我に返れば頭痛と吐き気と悔恨が一気に押し寄せてくるそのような一時を何の疑問も持たずに送ってしまったが、慣れ切ってしまえばその状態の馬鹿げた具合に更に羞恥が上乗せされた。そして馬鹿だ、と思った。

グラハムは豊富に所有していると自負する語彙力をもってしても、当てはまる言葉をそれしか知らなかった。

実の所、セックスは気持ちの良いことばかりではない。

無茶も良い所の器官に、無理やり挿入されているわけだから当然苦痛の方が多いのだ。

だのに、本気で抵抗をすればその柔そうな骨をへし折ることすら可能だろうに長い腕に大人しく抱き留められ、あっさりと侵入を許すなんて。カタギリが酷く優しく、グラハムが充分に慣れたのを見計らいつつ殊更気遣いながらゆっくりと挿入するので苦痛は最低限に抑えられているから、などという言い訳などとうに出来ぬくらいになっていた。

拒めるものならとうの昔に拒んでいたのだ。

 




 

 

 

嗚呼そうだった、とグラハムは独りごちる。

寝起きの頭に徐々に記憶が蘇って来た。昨夜は結構な酷さだったのだ。

最近のカタギリは嗜虐心があるのかサディスティックなプレイに傾倒しているのか、以前ならばさせなかった行為をグラハムに課すようになった。それでいてグラハムが素直に応じれば目を僅かに見開いて驚愕の色を滲ませた。

グラハムの快楽への弱さや、負けず嫌いの性格からすれば、煽れば否と言わずに挑んでくるのは解り切っているのに。

嗚呼、君の見ている前で自慰なぞ幾らでもしてやる、

と吐き捨てて事に及べばカタギリは要求した癖に明らかに戸惑い、それでいて荒々しくグラハムを
求めた。

そしてカタギリは一度では足らず、グラハムを言葉とその手管で煽り、最後には跨らせて何度も腰を振らせたのだ。

 

 

 

 

「……ッ」

 

グラハムは手のひらで顔を覆い、そっと息をついた。その拍子に下肢に僅かに痛みが走り、
正直ゾッとした。

…何度、したのか我々は。

簡単にタガが外れるのは自己の快楽への弱さ故か。

……カタギリ相手に何をどう発言して、どう強請ったかなぞ、思い出したくも無い。

思い出さなくとも、この数年でだいたいのパターンを踏んできたので、どれかには当てはまるだろうが。

しかし、欲しがって、欲しがらせて、手酷くしてはどこまでグラハムが受け入れられるのかを推し量るなぞ、昔のカタギリならしなかった。それは足りないだとか、セックスがしたいとか、いわゆる快楽を貪りたいというあけすけな欲ではなく、何がしかの迷いの表れなのだろうとグラハムは以前から推測していた。

あまりにカタギリの行動が矛盾し過ぎてはいないか、と。

そしてグラハムは思うのだ、嗚呼、君も何か私には打ち明けられぬものを常に燻らせているのだろうか、と。

だが、昔ならともかく体ばかりを重ねてしまった今だからこそ、軽々しくは訊けぬ事だった。

関係を持ち始めた頃の自分達の方が互いに手探りながらももっと甘やかで、それこそ恋と呼ぶのに相応しかったのではないだろうか。

だからこそ、このような醜い関係は恋などではないとグラハムは思うのだ。

グラハムとて、綺麗な恋ばかりを通過してきたわけでもないのだが。

 

 

 

 











NEXT



****************************************

続きます。










PR

2008/01/05 00:21 | Comments(0) | TrackBack() | ビリグラSS

トラックバック

トラックバックURL:

コメント

コメントを投稿する






Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字 (絵文字)



<<Dawn (2) (ビリグラSS) (R18) | HOME | 皆さんツボが同じでしたと言う話。>>
忍者ブログ[PR]