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2024/11/23 20:46 |
児戯 (ビリグラSS)


児戯 / ビリグラ(グラハム視点)


…最初からR18もどうかなと…思いましたので……。
先々週くらいに書いた、グラハム視点のお話です。

つづきから、どうぞです。


*********************************************

児戯 



 
 
 
 
 
まず言っておくが、これから話すのはどうしようもなく下らないことだ。
 
戯れにキスを仕掛けるのが私の楽しみである。
 
だから下らないと言っただろう。
だが10代のキスやセックスを覚えたての子供のような熱烈なそれとは違い、
まぁ……ちょっとした悪戯だ。
(流石に私の年齢でキス一つに幼い少女のように胸を高鳴らせ、頬を染めるようではその人生をやり直して来いと怒鳴りつけたい。)
 
誰に? 
…………嗚呼、期待を裏切って申し訳ない、相手は美女でも美少女でもなく、カタギリだ。
そう、あの変人にして天才の、我がMSWADの技術顧問だよ。
 
ドッグで、ラボで、輸送船の休憩室で、周りの目を盗んで軽く啄ばむような子供のキスを交わす。
今では悲しいかな挨拶代わりになってしまい、サプライズ性も薄れて日常化してしまったが、
最初は鳩が豆鉄砲を食らったような表情になり、奴の頬が赤みを帯びていく様が可笑しくて堪らなかった。
その面白さに、尻尾をこしらえた奴の髪に手を伸ばして引き寄せては、その頬やら唇やら鼻先やらこめかみに耳朶、部位に関わらず唇を押し付け楽しんでいた。
嗚呼、念の為に言うが舌までは入れていない。断じて。
 
 
だが、彼も意趣返しを狙っていたのだろう。
あれはラボで新作MSのミーティングをしていた際だったか。
二人きりでの夜食を兼ねた簡単なものとはいえ、ほんのちょっとした会話や思い付きが重要なアイディアに繋がることもある。
カタギリが根城にしているという薄汚れたソファに二人並んで腰掛け、オーク材の小さなテーブルに互いのモバイルと数種のドーナツ、珈琲とを所狭しと広げ、厨房から失敬してきたサンドウィッチを片手にミーティング兼無駄話に興じる。
再三のデータ解析を要求し、再びGを計算をし……と、一先ず次回テスト飛行までのデータを揃えた所で、ぽつりとカタギリが漏らした。
「……何色が良い?」
「色? 何のだ?」
「何って、君のMSの色。まぁ今の段階では量産機だがね、いつぞや君が出世して僕もそれなりに出世できれば君専用のを作ってあげる日が来るかもしれないじゃないか」
冷え切ったマグをテーブルに置きながら、ふ、とカタギリが笑う。
随分優しく笑うのだなと感じ、私に向けられるそれは子供扱いの表れかと当時は少々癇に障ったのだが、今にして思えばあの目を細めた顔は何か良からぬことを企んでいるものだった。
「…もしも。まぁ、何年も先だろうけどねぇ……」
MSのデザインデータは、モバイル上ではまだ白だ。
そしてドッグで次回のテスト飛行を待ち望んでいるフラッグ――試作段階だった当時はコードネームFであった――は未塗装で、金属が剥き出しとなったボディは美しさを欠いた物だった。
あまりに色の無いものは目に痛みを与える――、私はしばし目を閉じてイメージをしてみた。
嗚呼、何色かな…子供の頃に見た…あれは…あの好きだった戦闘機はなにい…ろ……、
 
 
気配も何も解らなかった。
上下の唇のほんの少しの隙間から生温かくて柔らかく、そしてざらついた、奇妙な動きをするものを差し込まれた。
咄嗟のことで押し返す気力も無い私の腕は弛緩し、ついでに食べかけのサンドウィッチを手から取り落とした。
勿体無い、とどこか頭の隅で冷静にそんなことを思った。
カタギリの舌は私の口腔を、上顎を不可解な動きで探り……、最後に舌を捕まえた。
 
…嗚呼待て。
カタギリ、何故に舌まで入れているのだ。
 
私としたことが、ほんの数秒のそれが、数十秒にも感じられた。
嗚呼私としたことがだ!!
目を開けば丁度奴の顔が離れていく瞬間で、あのカタギリが、明らかに欲情した目をしていた。
存分に、という時間ではないだろうがそれなりに私の唇を味わったのであろう奴は、満足そうな顔をしたが、あろうことか口を手の甲で拭った。
「……君、それは失礼じゃないか」
「え?」
「キスしておいて唇を拭うとは考えられない、少なくとも私は過去、いかなる場合もそのような失礼極まりなくムードを壊すような行動などしたことが無い……!!」
 
しかも、君は、下手糞だ!!
 
思わず喚いた私に、十数回目かのそれこそ鳩が豆鉄砲を食らったような表情をしてみせたカタギリは、数秒肩を震わせていたが、遂には腹を抱えんばかりに大笑いをした。
…重ね重ね失礼な男だ、本当に。
「…っ…ほん…とうに、君は、…くく、予測不可能な人だ……」
まさかそんな風に文句を言われるなんて、
とか、
怒る方向性が違うよ、ここはキスしたことを怒るんじゃないの、
等と苦しい息の下から断片的に漏れる言葉を繋いで推測すると上記のようになる。
眉間に皺を寄せていたのだろう私に、カタギリはちょっと失礼、と一言置いてから笑いに震える人指し指と親指とで、そっと私の眉間を押し解した。
 
 
…嗚呼、きっとその際に絆されたのだよ、私は。
 
 
「…なら、そのキスを……教えていただきたいものだねぇ? グラハム・エーカー殿」
非常に表現に乏しいのであまり言いたくはないが、聞き分けの無い子供を優しく宥めるような、諭すような、シッターのような笑顔で優しく手を握られて、何故か悪い気はしなかった。
私に向ける言葉はともかく、その眼差しには完全なる子供扱いが見て取れるのに、だ。
しかも二度目はどこに隠し持っていたんだこの詐欺!!
……と殴りたくなる程、あれこれ掻き立てられるキスだった。
嗚呼もう良い、何も言わない、もう私の思い出話はここまでだ!!
だから下らないと言っただろうが。
え?まるで姫君と騎士じゃないかって?
………相手はあのカタギリだぞ。馬鹿も休み休み言いたまえよ。
子供とシッターもどうかと思うがな。
 
 
 
 
 
 
その後?
 
そこでそのまま興に乗ってセックスをしたよ。
それまで私が散々戯れに仕掛けていた、あんな児戯以上に奴が驚くことといったら、それしか浮かばなかったのさ。
驚いて、それから笑みの深まった奴の黒い瞳が、一層色濃くなる様をもっと見たかったのだよ。
それはとてもとても美しく、
 
 
――― そう、私の好きな色なのだ。
 
 


ただ、それだけのことさ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
END



*****************************************
児戯 /
グラハムの惚気話。
…時系列的なことは良く解らないまま、あれ?勝手に過去話?
カスタムフラッグの黒色=グラハムの好きな色=カタギリの瞳の色と無茶妄想。 
色々詰め込み過ぎましたorz

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2007/11/08 01:29 | Comments(0) | TrackBack() | ビリグラSS

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