Foolishness / ビリグラ(6話ネタ)
6話を踏まえて書いてみました。ネタ被ってたらごめんなさい。
久々に三人称で書いたのでちと違和感が orz つづきから、どうぞです。
(結局SP見ないで書いてた。私は何をしているのか orz)
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Foolishness
昨夜はお愉しみだったのか、と余りに面白味に欠けた品の無い言葉が零れ出て、驚愕したのは寧ろグラハム自身であった。
少数精鋭のガンダム調査隊に宛がわれた小さな一室へ赴く前に、朝、ドッグの休憩室で珈琲を飲むのがいつの間にかグラハムの習慣になっている。
勿論、その朝の一時の過ごし方を教えてもいないのに、そこへカタギリもやって来ては世間話をするようになるまで左程時間はかからなかった。
勿論、その朝の一時の過ごし方を教えてもいないのに、そこへカタギリもやって来ては世間話をするようになるまで左程時間はかからなかった。
やれカスタムフラッグのここの性能が悪いだの、精度を上げろだの、まぁ待ってよ君への負担をこれ以上は上げられないよ、それよりエイフマン教授が新しく……等と窓の下、静かに眠る漆黒のフラッグを見ながら興じるのが定例で、もっと興に乗れば二人寝乱れたベッドで一緒の朝を迎えて、そのまま休憩室まで連れ立つこともあった。
そんなときはまるで同伴出勤だね、と眼鏡の奥でにやけるカタギリにグラハムが何を今更、と苦々しげな表情を向けるのもまた常である。
そして本日、定刻通りにグラハムが休憩室で安物の紙コップから珈琲をちびちびと啜り、最後の一滴まで胃に納めて一息ついた頃、いつもより大幅に遅れてカタギリがやって来た。
おはよう、とグラハムへ向けるその声音も目を細める仕草も柔らかく、何一つとしていつもと変わりは無かったが、異質な匂いにグラハムは眉をひそめた。
甘い匂いがするのだ。
軍部では嗅いだことの無い、そしてカタギリにはもっと縁遠いものであろう、彼の好きな甘味とは全く異なる合成的な甘い匂いがする。
花のような、紅茶のような、女子供が好みそうな甘いカクテルのような。
花のような、紅茶のような、女子供が好みそうな甘いカクテルのような。
それがカタギリの首筋から発するのだと気付き、グラハムは目の奥に焼けるような熱さを覚えて思わずカタギリを睨み付けた。
確か、昨夜は旧友と会ってくるよと、そう言っていたか。
言ってそのまま……帰ってきたのはいつだ。
何時だ。朝帰りか。
お愉しみだったのか、などというらしくない唐突な物言いに、カタギリは思わずカップホルダーに伸ばしかけていた手を止め、グラハムを振り返った。
見れば射るような視線が遠慮無しにぶつけられているではないか。
見れば射るような視線が遠慮無しにぶつけられているではないか。
「別にお前のプライベートな時間だ。どこで誰と何をしようと、私には関係無いし、興味も無い」
「……グラハム?」
流石にカタギリは訝しげな表情でグラハムを見たが、だがグラハムはただじっと見つめてくる眼鏡の奥の漆黒の瞳を見つめ返す事が出来ず、そっと視線を外した。
「その香りはやめろ。……落として来い。指揮に係わる」
「…香り?」
ただ穏やかな声音にグラハムは思わず声を荒げそうになったが、瞬間的にその行為を酷く恥じ、ごく静かに告げた。
「……女の匂いがする。シャワーくらい浴びてきたらどうだ。いい加減に落とせ」
嗚呼違う、言いたいのはこんなことじゃない、こんなことではない。
「………」
「MSWADじゃない、外の女の香りだ、安物のフレグランスの匂いだ、お前は、お前の旧友というのは………」
グラハムはふる、と頭を振ったが口から零れる言葉も声音も己のコントロールを外れたもので柄に無く混乱した。
嗚呼違う、違う、これでは、これではまるで――、
ぐ、と二の腕に食い込むような痛みを感じ、グラハムは次の瞬間には背を壁にしたたかに打ち付けていた。
カタギリによって二の腕をつかまれ壁に押し付けられていたと認識したのはその後で、見上げれば口元に笑みを刻んだ、夜を纏った男がそこにいた。
「……グラハム、」
笑みが、深くなる。
愉しそうに謡うように囁くその声は、いつでもグラハムに何百もの夜を思い起こさせる。
カタギリはグラハムの瞳を覗き込むように僅かに腰を折ると、鼻先近くで囁いた。
「妬いた?」
カッ、と目の奥が更に熱くなる感覚を覚え、グラハムは思わずカタギリの顔を押しのけようとしたが逆にその手を捕らえられ、手のひらを舐められる。
「カタギリ……ッ」
振り解こうとするが叶わず、そのまま手首ごと壁に押し付けられ、もう一方の手も有無を言わさず壁に縫い止められてしまう。片手を支配するくすぐったさに、情けなくも力が入らない。
抵抗の薄れたグラハムを嗤うように、カタギリの舌先は手のひらから固く浮き上がった手豆へと移り、それから一層ほの白い指の股を犯しては指先を口に含んだ。
「…ゃ、め、」
「やめない」
「離せ、馬鹿ッ…!!」
「離せ、馬鹿ッ…!!」
「馬鹿で結構」
カリ、と抗議するようにカタギリが指先に歯を立てれば、その痛みにもグラハムは感じた。
嫌でも思い起こさせる過ごした夜の感覚に捕らえられそうになり、それと同時に詮無き考えに支配される。
嗚呼、その女にも同じことを施したのか、私にするのと同じように、それとも同じようにではなく一層手酷く、若しくは殊更優しく扱ったのか。
そして私に見せるのと同じ表情で、それとも異なる表情で、私の見たことの無い知らない顔で、
お前はその女を抱いたのか、
お前はその女を抱いたのか、
―――カタギリ。
……旧友だと言っていた。
会うのは大学院以来だと。
でもお前は、……笑顔だった。
笑って、いたんだ。
私に見せるのと、同じように。
ひとしきりグラハムの片手を犯したカタギリは満足したのか、自らの唾液で濡れる白い指を唇から抜き取り、今度は優しく愛撫するようにブロンドの波を食んだ。
器用な唇がグラハムの髪を掻き分け、こめかみを探り当ててキスを落とす。
何千も繰り返された、今更どうということも無い行為にもグラハムは吐息を漏らした。
カタギリと、自らの息遣いをより一層間近に感じ、慣れ切って忘れ去られていたはずの感覚にも身をよじる。
だがどこまでも酷な男は、そのまま耳をも食んではグラハムを喘がせた。
「妬いてくれたの?……嬉しいなぁ」
悪魔のような声音に、手酷く犯された過去の一夜を思い出す。
「ちが……」
「違わないでしょ、そうなんだよねぇ?」
ねぇ、グラハム。
否定すら即座に却下され、耳孔に直接吹き込まれた名を呼ぶ声音は今度は酷く優しいもので、初めての夜を思い出させた。
嫌だ、
離せ、
こんなのは、
こんなのはお前、
酷く、
ずるいじゃないか……、
「―――僕の方ばかりが君を好きなんだと思っていたよ」
降る声は、優しくグラハムの心を侵していった。
「僕が君を想うほど、君は僕を想ってはいないと。解っていたし、それで良かったし、それに今更そんなことをどうこう言う関係じゃないだろう?」
陵辱するのではなく侵食するように、まっさらな紙が落とされたインクを吸い込むように、徐々にカタギリはグラハムを染め上げる。
「……カタギリ、」
堪らず名を呼べば、慈しむような漆黒の瞳に囚われる。
その奥底に、夜を纏ったずるい瞳が。
嗚呼、逃げられない。
「――確かめてみるかい?」
「……ッ」
「大丈夫、今日は出撃なんてありはしないよ、――多分」
漏らした吐息は行為への期待か。
「だから、沢山、してあげる」
沢山、抱いてあげる。意地悪も、沢山するね。
でも、今は一度だけ。……残りは今夜にでも。
降り積もる声に、グラハムは身動きが取れなくなる。
馬鹿、と力無く呟く声は、肯定の証だった。
「……馬鹿は君の方だよ」
慣れた手指が、ゆっくりとグラハムのタイを乱していった。
そうしてまた、飽きもせず馬鹿な行為に二人興じるのだ。
そうしてまた、飽きもせず馬鹿な行為に二人興じるのだ。
END
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…お前ら仕事して下さい…
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