Please (ビリグラSS)(拍手用SS 再録)
拍手用SSの第五弾。
随分古いものになりますね……orz
再録分は加筆修正しています。
つづきから、どうぞです。
Please
ひどく緊張した面持ちでグラハムは眉をひそめると、
意を決したように僕の肩に手をかけ身を乗り出した。
意を決したように僕の肩に手をかけ身を乗り出した。
僕の目を見ては逸らし、薄い唇に白い前歯を立てるという動作を二三度経てからのそれに、
僕はひどく柔らかいもので心臓を包まれるような気持ちになって自然と頬を緩ませた。
僕はひどく柔らかいもので心臓を包まれるような気持ちになって自然と頬を緩ませた。
いつもの不意をつくようにキスを仕掛ける際の、手慣れてカジュアルな様とは異なる彼の仕草に僕はじんわりと温かいものが胸の中に広がっては染められて行くような、懐かしい感覚に捕らわれた。
ねぇ君、初々しいにも程があるんじゃないのかい。
彼のそんな仕草が僕の脳裏に蘇らせた古い記憶は爪先立ちでキスを強請った幼いあの日のことで、
まだ僕自身が繊細で柔らかい心根を持ちえていた時分のことだ。
まだ僕自身が繊細で柔らかい心根を持ちえていた時分のことだ。
爪先立ちでやっと手に届くそこ、白く柔らかいそれを強請ってあの人を困らせたあの日、
子供の戯言と苦笑して柔らかいそれをくれた人の顔が思わず胸に過ぎったのは、
グラハムが僕に向ける表情がひどく愛らしくて真摯だからだ。
子供の戯言と苦笑して柔らかいそれをくれた人の顔が思わず胸に過ぎったのは、
グラハムが僕に向ける表情がひどく愛らしくて真摯だからだ。
嗚呼あの日の僕も、小さな小さな僕も。
こんな顔をしていたのだろうか。
視界に影が降りて徐々に薄暗くなれば、微かにかかる吐息に口元が緩む。
嗚呼ほらもう少し、ねぇもっと欲しがって良いのにと、自然と唇が笑みを形作るのを堪えながら、
僕はそっと彼の腰を抱き寄せた。
僕はそっと彼の腰を抱き寄せた。
伝わる熱のひどく高い様はそのまま彼の緊張を伝え、僅かに揺らめく腰の動きと肩に食い込んでくる指の強さに、ただでさえせっかちな彼の鼓動が高く速く跳ね上がるのを想像しては、僕は目を細めた。
「………カタギリ、」
唇が届く寸前、鼻先近くの距離でグラハムは憮然とした表情になると、
抗議を内包するようなごく低い声音で僕の名を呼んだ。
「……何?」
「目を閉じたまえ」
「………駄目かい?」
僅かに首を傾げれば、私の要求を飲みたまえ、
と更に低く呻くようなそれが追加され、僕は緩む頬を彼に曝すばかりだ。
あぁ、わかってる。
わかってるよ。
それでも彼の言葉を欲しがる僕は欲張りだろうか。
彼が望みを口にして、それから更に僕を求める表情が見たいだなんて。
僕は鼻先近くの距離で見慣れた顔を検分しては、
次第に上気して行く彼の白い頬にそっと指先を這わせた。
ねぇ、駄目かな。
君が瞼を閉じて細かく睫毛を震わせては、
届かない唇に不安そうに怯える様を見たいだなんて。
薄く開いた唇が飴玉を強請るみたいに僕を求める様を見たいだなんて。
僅かな後に僕の視界を埋め尽くすだろう彼の表情を右脳を尽くしてあれこれ思い描いていたのに、
不意に伸びて来た無骨な手が僕のメガネを奪ってしまった。
嗚呼またかい、と僕は彼の悪戯に苦笑したが、
何故か続いてひたと温かいもので視界を覆われ闇を得た。
「…っちょ…と、グラハ…っ」
突然訪れた闇に慌てる僕は、やがて唇に届いたそれを存分に味わった。
僕の目を塞いでいた彼の手が離れると、視界は蜜色に染められていた。
ふわふわと揺れるそれに鼻先を埋めて唇を落としてやれば、
またそれがふわりと揺れて、僕を退けようとする。
嗚呼、酷いなぁ、あんなに可愛いことをしておいて。
「……ねぇグラハム、」
「何だ」
耳に届く相変わらずの声音に僕は笑いを堪え切れず、肩をひとしきり震わせた。
それから一呼吸して、顔を伏せる彼の耳元でゆっくりと囁いた。
ねぇ、お願いだから顔を上げて?
そしてもう一度、キスを。
「………カタギリ、」
唇が届く寸前、鼻先近くの距離でグラハムは憮然とした表情になると、
抗議を内包するようなごく低い声音で僕の名を呼んだ。
「……何?」
「目を閉じたまえ」
「………駄目かい?」
僅かに首を傾げれば、私の要求を飲みたまえ、
と更に低く呻くようなそれが追加され、僕は緩む頬を彼に曝すばかりだ。
あぁ、わかってる。
わかってるよ。
それでも彼の言葉を欲しがる僕は欲張りだろうか。
彼が望みを口にして、それから更に僕を求める表情が見たいだなんて。
僕は鼻先近くの距離で見慣れた顔を検分しては、
次第に上気して行く彼の白い頬にそっと指先を這わせた。
ねぇ、駄目かな。
君が瞼を閉じて細かく睫毛を震わせては、
届かない唇に不安そうに怯える様を見たいだなんて。
薄く開いた唇が飴玉を強請るみたいに僕を求める様を見たいだなんて。
僅かな後に僕の視界を埋め尽くすだろう彼の表情を右脳を尽くしてあれこれ思い描いていたのに、
不意に伸びて来た無骨な手が僕のメガネを奪ってしまった。
嗚呼またかい、と僕は彼の悪戯に苦笑したが、
何故か続いてひたと温かいもので視界を覆われ闇を得た。
「…っちょ…と、グラハ…っ」
突然訪れた闇に慌てる僕は、やがて唇に届いたそれを存分に味わった。
僕の目を塞いでいた彼の手が離れると、視界は蜜色に染められていた。
ふわふわと揺れるそれに鼻先を埋めて唇を落としてやれば、
またそれがふわりと揺れて、僕を退けようとする。
嗚呼、酷いなぁ、あんなに可愛いことをしておいて。
「……ねぇグラハム、」
「何だ」
耳に届く相変わらずの声音に僕は笑いを堪え切れず、肩をひとしきり震わせた。
それから一呼吸して、顔を伏せる彼の耳元でゆっくりと囁いた。
ねぇ、お願いだから顔を上げて?
そしてもう一度、キスを。
END
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読み返すと甘々を書いていたんだなぁと今更のように思います。
カタギリ少年の「あの人」にはツッコミ不可でお願い致します。
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