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2024/11/23 23:59 |
コーリング・ユー(2227 another story)(2) (ビリグラSS)




コーリング・ユー(2227 another story) (2)  (ビリグラSS)

*注・三次創作です*


(1)はこちら*

*(2)はつづきからどうぞです*



*****************************************
■原作/ししまさま+ヴェーダ
■cave canem さまの「2227」(memo)の設定を元にしたお話です。(三次創作になります)
■22ギリ×27グラ、その後の二人、ぽい感じ。
■神に誓ってビリグラですが、グラビリっぽいです。
■ひみつ本版に加筆修正を加えています。





コーリング・ユー(2227 another story) (2)  (ビリグラSS)















 
 
 
 
 
 
 
「――――― 私だ、」
 
 

 
 
 たったの1コールで耳に届いた彼の声は高飛車な癖に端々が華やいでいて、伝わる空気の柔らかさに僕はほんの少し息を吐き出した。僕だけど、と再びの吐息と共に零れた僕の声はか細くて、我ながらおかしかった。
 何だ、僕はどうやら緊張していたらしい。
にじ、とサンダルの中で足指を曲げると少し汗を掻いていたらしくて、底が滑ったのか親指の辺りで妙な音がした。
 頬を撫でていく風は心地好くて、僕の髪を優しくなぞるように揺らせた。
 さわさわと揺れるのは頭上の木立で、ベンチに座る僕の周りに落とす影が斑のまま大きく動く。僕の膝を光が滲んだ漆黒には少し届かない濃茶と光の黄が斑に染めながら時折跳ねて、定まりはしなかった。

「……音声のみの通話とはこれまた珍しい。もしや君、入浴中かね」

 嗚呼、やっぱり指摘されたか。
 ジョークを交えてそんな風にグラハムは言うけれども指摘は最もで、相手の顔を目にし、自らの姿を晒せての通話が一般化した今、音声のみの通話はそれ程スタンダードでもなくなっていた。
「そんな……まさか、僕が裸のまま君に電話を?」
 僕がそんな事する筈無いだろとくすくすと漏れる声はそのままに肩を震わせながら返せば、本気で落胆した声が耳に届いた。嗚呼、駄目だこの人。結構本気だ。
僕はグラハムに連絡をする直前に、透過モニタにも落とされた木立の影に所々邪魔をされながらも、数回の操作ミスを経てから音声のみの通話に切り替えることに成功していた。
 とてもじゃないけど、僕は携帯端末越しとはいえ彼のあの目を見て落ち着いて話を出来るとは思えなかった。今だって喉がからからで上手く声も出なくて、恥ずかしいとか逃げ出したいとか諸々の感情が全部混ざった妙な表情になっているだろう。やはり音声のみにして正解だった。
「………っ」
折角電話を掛けたにもかかわらず、早速言葉が上手く出なかった。グラハムから声が届く、でも上手く返せない。あぁ僕は何をやっているのか。

「……カタギリ?」

 聞こえているかね、の問いに、思わずうなずく。うなずいちゃ駄目だ、伝わらないじゃないか。
「何かあったのかね?」
 何もないよ、と返す僕の声は今度は掠れ始めた。端末の向こう、電話口の彼からは車のクラクションが時折聞こえる。既に校外へ出ているのだろうか。夕方五時を過ぎれば流石に高校も授業が終るか。
「――何処からかけているのかね?研究棟だろうか」
公園にいる旨を伝えると、了解した、とただそれだけが返答された。
「それにしても、君が私に電話を寄越すとは重ね重ね珍しいこともあるものだ。どうしたかね、私に会いたくなったのだろうか?」
左耳に当てた端末から、不遜で自信に満ち溢れた声が続いた。きっと言いながら、無駄に胸を張り、端末の向こうの僕に向かって上目にあの鋭い視線を寄越しているのだろう。
 そのまま彼の顔が近づいて、僕の視界が彼のグリーンアイズやミルク色の頬やら、赤くつやつやした舌だとかに埋め尽くされる感覚を思い出して、心拍数が上昇するのを感じた。吐息は熱く、胸が妙に痛い。

 カタギリ、と語尾を半音上げ疑問符を付けて、再度彼が僕を呼んだ。それから続く、訝る声音は言葉の途切れた僕の身を案じているらしい。
 あぁ大丈夫、何でもないよ。何でも無いけど……、


「――会いたくなったかどうかなんて、そんなの解らないよ」


 会いたいだとか、顔を見たいだとか、そんなこと。


「ほぅ? では何故……私に電話を、」
 機械を通して伝わるグラハムの声は籠り気味で、少し残念に思う。
 それなのに低く艶めいた彼の声はひどく楽しそうだった。いつものように目を細めて、爪先立っては僕の頭を無理やり抱えて撫でまわすときのような、謡うような、笑うような。僕を呼ぶ声は駆け出す子供のように弾んでおり、甘く僕の鼓膜を震わせた。吐息すればまた名を呼ばれる。
 彼と空間を繋ぐちっぽけな機械を持つ手が震えた。
 そして優しく囁くように彼は命じた。言いたまえ、言いなさい、と。
「……………、」
僕は声に出せないまま頭を振った。さわ、と結った髪が揺れた。
嗚呼言えるか、言えるものか。
何故連絡をくれなかったのかだなんて、君からのメールを心待ちにしていただなんて。
 待てど暮らせど届かないメールに焦れて、僕から電話をかけただなんて。
 サンダルの踵で芝を掻く。不自然に伸びた緑がくるぶしを少し撫でて行き、くすぐったかった。電話の向こう、我慢弱いはずの彼は珍しく僕の言葉を待っているようだった。彼の声の後ろで響いていたクラクションがふと止んだ。どこか店にでも入ったのだろうか。

「………ねぇ、」

 不自然な沈黙の居心地の悪さに、何か話してよと求めたけれど、笑う空気が伝わるだけだ。回線を通してまで君って人は。


――ねぇ、

 
僕はもっとと強請るみたいに、携帯端末に耳を強く押し付けた。



「………聴きたくなっちゃったから、」



君の声が。
 
 
そう続けたけれども、妙に掠れて上手く発音できたか少し自信が無かった。
だって、彼からの連絡をわざわざ外で待ち続けていたから喉がからからなんだもの。端末の向こうから僅かにひゅっと息を飲むような風情を鼓膜に感じたけれども、グラハムは何かを思案しているのか口を噤んでいるようだった。 

嗚呼ねぇグラハム、早く何か言ってくれよ。


 

 


「―――これでは、今日こそは君を帰したくなくなってしまうな」







 訪れた彼の囁きは左耳に当てた携帯端末からではなく、右耳に直接吹き込まれた。
「っ………!」
 鼓膜が震えてダイレクトに伝わるそれと、耳孔に吹き掛けられた熱い吐息に僕は思わず肩をすくめて右耳を押さえた。
嗚呼……、肉声だ。
機械を通したこもりがちのそれではなく、低く艶やかな彼の肉声だと知覚して僕はすぐさま振り返った。

「―――っ、」
何で、と言う声すら出ない。
そこにいたのは、たった今まで僕と電話回線を通して話をしていたはずのグラハムだった。
 右手で抑えたはずの耳朶に、遅れてやって来た僅かな濡れた感触にもしやと思うがそれより何より、何故彼が今、ここにいるのだろうか。

「………どうして、君が……?」
「―――名前で呼ばないなら返事はしないと、再三申し入れたはずだが?」
顔を寄せられ悪戯心のままに煌めくグリーンアイズが近づいて、僕はあっけなく彼の鼻先近くの世界に留められた。僕の直近の記憶ではそれなりの、否かなりの男前だったはずなのだが、彼はだらしなく緩んだ口元を至近距離で僕に晒し、それから目を細めていた。
 鼻先近くのその距離は初めて言葉を交わしたあの日から変わらない。彼の吐息を間近に感じて酷く熱い、
それから彼の体温を。嗚呼、近いんだってばもぅ!

「い……つからそこに?」
「愛の力で飛んで来たのだよ」
「そんな馬鹿な」

 まさか僕の背後にいながら電話を受けていたって言うんだろうか。まだびっくりしているのだろう僕の舌と喉は妙な発声で彼に問い掛けた。それから彼の双眸に当てられて腰が及ぶままに離れようとしたけれど、グラハムは耳を抑えたままの僕の手を取り、それから見せつけるように甲に口付けた。逃げるなと言うのだろうか。
 僕は今しがたまで彼と空間を繋いでいた小さな塊を握り締めた。

「……私がここに着いたのはつい先程だよ、ビリー・カタギリ。君は公園にいると言っていただろう?何、私もこの近くまでたまたま来ていたのだよ。進路を君に変更して探索したところ、すぐに見つかった」
「なら偶然じゃないか」
「無論、偶然に過ぎないがこれはただの偶然ではないよ、君。私は運が良い、やはり私の君への愛の深さを酌んで、神が粋な計らいをしてくれたと見える」
グラハムは笑って続けた。そりゃあ、こんなに閑散とした公園の人気の無いベンチ群の中にいるのだもの。白衣姿でいるんだから尚更、埋没しがちな没個性的な僕でもすぐに見つかるんじゃないのかな。そう釘を刺したにもかかわらず、彼の口上は止まらなかった。
嗚呼、また運命がどうとか言ってるよこの人。

「あのように電話口で可愛らしい事を言われてしまっては、会いたくて堪らなくなるというもの……!しかし君はこのような時に限って、端末を音声のみの設定にしている。甘く吐息する君の姿を存分に想像しては楽しみはしたのだが、まるで焦らされているようだったよ…!」
 ……やっぱり顔を見せずに電話して正解だった。
 と言うより寧ろ、彼の顔を見ずに電話する環境を作って正解だった。音声設定様々だ。
 グラハムは尚も熱烈にあれこれ言い募っては僕の手を離そうとしなかった。
 手の甲の濡れた感触も、柔らかく握られた感触も止まりそうにない。嗚呼もう、だから嫌なんだ。

「それにしても、何も後ろに隠れなくたって良いじゃないか!」
どれだけ僕がびっくりしたと思ってるんだい、ズルいよ、不意打ちじゃないかと告げても、グラハムは子供にするように僕を宥めるばかりだ。
「――気配に気付かぬ君にも問題はあると思うが?」
「………ッ、」
言い返されて言葉に詰まる。でも彼の声に一喜一憂したあんな電話をかけた後で何も言い返せなかった。
全くそんなに無防備では心配だな、誘拐でもされたら如何するつもりかね、とグラハムは些か咎めるような口調で続けると、僕の指先を優しく捕らえ直した。

「……幸い君も無事だったことだし、このような無粋な問答はこれまでにしようか。嗚呼、君が恋しくて会いたいと逸る心を抑えて任務に励み、千里をも飛び越えて来たのだよ……!」
「……ここから歩いてたった五分の高校だよね、君の勤務先は」

 たった五分で大袈裟な。と言うか、それなら任務じゃなくて授業じゃないかな、と言う僕の呟きには熟知していると返答をするものの、グラハムは僕の手の甲に頬を寄せ、熱烈な口説き文句を浴びせる。それから、愛の力があれば空間を越えてすぐさま君の元へ駆けつけることも可能なのだよ、とグラハムはまた大仰に宣言した。 
 嗚呼、一々オーバーなんだよ君は!
「君ねぇ、またそんなこと言って……!」
相変わらずこの軍人被れの高校教師は恥ずかしい。そして鬱陶しい。
 嗚呼、ここが人気の無い公園で本当に良かった。いつだったか、カップルでごった返すカフェでこの問答をやる羽目になったときはあまりにも注目を浴びてしまって恥ずかしくて堪らなかった。
 そりゃそうだろう、いわゆる麗人が高飛車に運命だの愛だのの演説をぶつけてくるのだ。そしてその矛先が僕な訳で、寧ろ相手はどんな奴なんだと僕にも視線が集まるのだった。
それにしても、至近距離で見る彼の顔に、僕はいつになったら慣れるのだろうか。鼻先近くで吸い込まれそうなグリーンアイズに見つめられて、それでも目を逸らせず見つめ返せる人がいたらお目にかかりたい。
「嗚呼……カタギリ、私の目を見たまえよ」
 堪らなくなって俯き、体を捻る体勢のままベンチの背と彼のタイの結び目ばかりを視界に入れれば、グラハムの指が僕の顎に伸びた。
「…ちょっと……、待って、」
「待てんよ、もう――」
右手は相変わらず彼のもう一方の手に捕らえられたままだし、恭しく握る手を振り払えそうにない。
 顎の先の1ミリにも満たない剃り残しを咎めるように、グラハムはそこばかりを親指でくすぐるように撫でた。
 やだよ、と顔を振って抗議したのにそれは聞き入れてもらえなかった。
無理だよ、見れない、とやっとのことで出た言葉に、彼が喉奥で笑うのが解った。
ふ、と影がほんの少しだけ濃くなったようで、顔を僅かに上げると彼の形の良い耳が見えた。頬を頬ですられているようで、重なるそこが妙に熱く、彼の高い体温を僕はまた思い知る。それと、僅かに香る彼の汗と、フレグランス。立ち上るそれに、また胸が痛くなった。

「………本当に…、君は可愛いな」

 囁きの直後に舌の濡れた感触を耳孔に感じて、まさかと思う。反射的に肩をすくめた僕に構わず、彼はうっとりと囁いた。
 
 
 

 
「嗚呼……これは、帰したくないな、」
 
 

 
 
 ちょっと、待って…!
 
 
 
「デ…ッ、デートしよう、デート!」
 
 
 やっとのことで振り切ってベンチから立ち上がると、僕はベンチの背にもたれるように腰を折る彼を見下ろした。何か最後に不穏なことを言われたような気がする。帰したくないって、そういうことだろうか。
 まさか、そんな……!

 息が荒い。悪戯な舌の攻撃を受けた耳を押さえれば、そこは燃えるように熱かった。
 ざ、と血が逆流するのが解る、心臓が強く早く脈を打って滅茶苦茶に痛い、嗚呼何なんだ、何なんだよこれ。
 僕は胸に手を当てた。いわゆるそれは早鐘ってやつで、早まる鼓動が痛みを伴う。こんなの今まで経験したことなんか無かった。 
嗚呼、本当にどうしちゃったんだろうか、僕は。
「――デートと言ったな、君」
 グラハムは口元に深く笑みを刻むと、腰を伸ばして僕と視線を合わせた。顎を僅かに仰のかせているのは僕の方がほんの少しだけ背が高いからで、それを彼は少し気に食わないのかもしれない。
「ならばカフェまでご同行願おう。その後は……、映画でも?」
 くすくすと漏れる笑い声で、僕は彼にからかわれていたのだと悟った。そりゃそうだ、何も僕相手に本気でどうこうしようなんて、彼が思うはず無いじゃないか。
「……ゆっくり話そうよ、カフェで」
 映画とかじゃなくて、まずは話さなければ、と思った。彼と話を。何でもいい、彼のことを僕はもっと知らなければいけないように思ったんだ。一方通行の情報ではなく、お互いに話をして知り合う必要があるんじゃないだろうか。僕の提案にグラハムは、喜んで、と微笑んだ。
「――ならば行こうか?愛しい君」
 まるでレディにするみたいに、柔らかく手を差し伸べてきた彼に、僕は頬を掻きながら苦笑した。

「……お願いだから、もう少し普通にしててくれないかな…」

 不遜な微笑みと共に伸べられる手を、僕は苦笑しながら握り返した。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 ――ねぇ、僕を帰したくないのなら、帰りたくないって言わせてごらんよ。
 
 
 
 
 
 
 
 






END
















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「2227」のその後の体裁になります。
書きながらハム先生のドラマCDを聴き直した所為か、ししまさん版よりハム先生が鬱陶しいですorz
……嗚呼……難しいものです…orz(ししまさん版の方は22ギリも27グラももっと男前なのです)
グラビリっぽいですが神に誓ってビリグラです。
(将来的にはビリグラになるわけで)(from夜明けのチャット)

嗚呼…22ギリって本当に可愛いですね…。(まだ言ってる)




















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2009/02/15 01:49 | ビリグラSS

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