Tears
17話を見て。追悼。
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Tears
自分の今を形成し、構築しているのは積み重ねて来た数多の過去だ。
その思想を特に気にも止めていなかったのだが、恋に狂った大昔の思想家が唱える戯言は、
なるほど的を得ていると思った。
なるほど的を得ていると思った。
数多の過去の積み重ねが今へと繋がり、そして今もまた未来へ繋がるのだと。
長患いに苦しむその思想家は、愛する女に出会ったその瞬間に、過去からそして現在進行形で
自己を蝕む病も、それによって与えられ続ける痛みも何もかもを受け入れた。
自己を蝕む病も、それによって与えられ続ける痛みも何もかもを受け入れた。
過去積み重ねてきた全ての事象が愛する女に出会う為に必要なツールであり、要素だったのだと、
己を取り巻く全ての不運も幸運も受け入れ肯定したのだ。
誇大妄想も良いところだ、と少女染みたその思考にどこか頬が緩んだ時期もあった。
しかし、どうだろう。
過去の全ての事象が今に繋がるのであれば。
己を取り巻く全ての不運も幸運も受け入れ肯定したのだ。
誇大妄想も良いところだ、と少女染みたその思考にどこか頬が緩んだ時期もあった。
しかし、どうだろう。
過去の全ての事象が今に繋がるのであれば。
友を、同胞を失うことは何へと繋がるのだろうか。
背後から名を呼ばれ、肩を抱かれる。
慣れた長い指先が肩にかける重みも何もかも、記憶していたものより少し軽かった。
恩師を亡くしたこの男も、一睡も眠りをやっていなかったのだと思い当たる。
嗚呼、君も私と同じか。
そっと肩に置かれた手に手を重ねてやれば、わずかに握り返される力の弱さに胸が痛んだ。
おびただしい数の漆黒の箱が地中へと深く降ろされる。
肩に置かれた指に力が込められる。
震えるその指先、気配で男の肩をも震えるのが解る。
嗚咽など堪えなくとも良い。
すかして目頭を押さえるのなど止めろ、君の仮面となっている眼鏡なぞ私が取り去ってやろう。
こんなときくらい心のままに、両の眼からとめどなく溢れるものを見せてやれば良いじゃないか。
こんなときくらい心のままに、両の眼からとめどなく溢れるものを見せてやれば良いじゃないか。
零れた涙の分だけ死者は天へ逝けるのだと、何かの本で読んだことがある。
その御伽噺に、今だけでもすがってやっても良い。
なぁ、許されるのならば私も、
両の眼から込み上げるものはそのままに、ただ泣かせてくれないか。
両の眼から込み上げるものはそのままに、ただ泣かせてくれないか。
笑うなら笑え。
友の最期に、同胞の最期になす術もなく立ち尽くす私を笑え。
心の何処かであの最期は定められたものなのか、そうではなかったのか、
如何なる過去を重ねた結果にもたらされた物なのか、女々しく幾つもの分岐点を探す私を笑え。
友の最期に、同胞の最期になす術もなく立ち尽くす私を笑え。
心の何処かであの最期は定められたものなのか、そうではなかったのか、
如何なる過去を重ねた結果にもたらされた物なのか、女々しく幾つもの分岐点を探す私を笑え。
せめてあの禍々しい最期、
一瞬にして友が、同胞が、傍らの男の恩師が尽きた最期、
それが繋がる未来に光が在ればと願う。
しかし未来などあるのだろうか。
愛する者の死をもって繋がる未来などあるのだろうか。
なぁハワードよ、君は最期まで私の名を呼ぶことはなかったな。
頑固な奴だ。
せめて最期くらい私の名を呼び、共に肩を並べたあの頃に立ち戻っても良かったのに。
酔えば一度は私のファーストネームを口にして、それから律儀に敬礼してまで謝罪した君だ。
最期の最期まで私の部下で、ハワード・メイスン准尉でいたのだな。
嗚呼、愛しき友よ、同胞よ、禍々しい光に奪われた者よ、
せめてこの頬を伝う涙が、
白き光満ちる処への道標とならんことを。
白き光満ちる処への道標とならんことを。
END
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皆が綺麗な光に満ちた所へ行けますように。
皆が大好きでした。
思想家はドイツの某思想家です。
(解釈が色々間違っていたら申し訳ありません)
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