忍者ブログ
[PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


2024/05/19 16:30 |
Cotton (ビリグラSS)(拍手用SS再録)


Cotton   (ビリグラSS) (拍手用SS 再録)






拍手用SSの第四弾です。
一年近く掲載という最長記録に……orz
カタギリがちょいグレーです。


つづきから、どうぞです。









Cotton 
 
 
 









 
 
ベッドの上で隣を探るのが、いつの間にか僕の癖になっていた。


寝ながら左手をシーツの上で滑らせては手のひらに馴染む柔らかな肌を求め、
指先に当たる感触に、触れるそれらにどこか安堵を覚え始めたのはいつからだろうか。
 
 
 
意識下ならばともかく、セックスの疲労で泥のように眠りながらも僕の癖が出るのはよくあることで、
翌朝顔を合わせたグラハムから小言を頂戴したのも一度や二度ではない。
 
 
どうやら今朝の僕は、彼特有の高い体温を宿した柔らかな肌に触れてそのまま、
無意識に下肢の際どい箇所までまさぐるという暴挙をやらかしてしまったらしい。
 
 
明らかに意識を持って触れているのではないかとグラハムが思う程、眠っているというのに僕の手は
なかなか的確に動いたようで、
そのまま興に乗って朝から一戦交えることになってしまった。
 
 
僕の手先が器用に出来ているのは生まれつきだけど、何もそこまで融通を効かさなくとも良いだろうに。
 
いったいどういう脳構造なのだろう、生憎僕の専門ではないが少し調べてみる価値はあるだろうか。
 
 
 
 
 
案の定グラハムは少々機嫌を損ねているようで、
出勤前に何てことをしてくれるんだと眉をひそめて掠れた低い声で僕に小言を述べた。
 
 
くどくどと続くそれは、
朝から妙な気を起こすな、君は節度を持った奴だと思っていたのに出勤前に盛るとはどういうことだ、
といった僕への一方的な非難で構成された何とも不毛なものだった。
 
 
一先ず僕は嗚呼悪かったねと殊勝に謝罪して制したが、
今日に限って珍しく彼の小言は更に独り言へと変わって続き、僕を少々イラつかせた。
 
 あくまで合意の上でしたセックスに文句をつけられるのは流石に心外だし、
グラハムだって満更でもなかった癖に。
 
 
嗚呼これだから君の隣でいつまでもぐずぐずするのは嫌なのだよ、
シャワーもまだ浴び足りない、忙しい朝の貴重な一時が台無しだ、
と続くその声音はやはり掠れたままだ。
 
 
しかしそれは興に乗った彼が昨夜の無茶に続いて声を上げた結果な訳で、
後先を考えず挑んで来た彼の無鉄砲さを表すだけでしかなかった。
 
 
 
 
「……あのねぇグラハム、朝からその気になって僕にのしかかって来たのは、」
 
 
 
 
君でしょ、と続ける間も無く飛んで来た枕が顔にヒットして僕は口をふさがれた。
こんなことにエースの瞬発力を発揮しなくても良いよ、嗚呼もう眼鏡がずれちゃったよ。鼻も痛い。
 
 
枕の衝撃にずれた眼鏡を溜息交じりに直して取り戻したクリアな視界で見れば、
彼は荒々しくユニオンブルーのジャケットに袖を通し、いつもより盛大に跳ねる髪もそのまま、
先に行くと一言置いて出て行くところだった。
 
 
こうして二人で迎えた朝に習慣づいていた、僕の部屋を出る前の軽いキスは本日容赦なくカットされた。
いやもう馬鹿馬鹿しいにも程がある習慣なので、幾らでも割愛してくれて構わないのだけれど。
 
 
嗚呼でもぴょこぴょこと大きく跳ねる髪を押さえながら逃げるように出て行く頬が、
少し朱を帯びたように見えたのは、
きっと気のせいではないだろう。
 
 
全くもぅ、これだから君って人は。
 
 
くつくつと込み上げる笑いに僕は右手で顎を撫でてそのまま、緩む頬を押さえた。
 
 
 
 
――― 可愛い人だなぁ、本当に。
 
 
 
 
 
僕がベッドの上で腕を伸ばした先にあるのがいつでも生身の肉体というわけではない。
 
 
時には、彼が夜明けに僕の腕からそっと脱け出して置いて行った、
体温の成れの果てを宿したシーツのみの場合もあった。
 
 
嗚呼今日は僕を起こさずに出て行ったのか、
といつもの柔らかな感触ではなく手のひらに伝わる安いコットンの少しごわついた手触りに、
ほんの少し寂しさを覚え始めたのはいつからだろうか。
 
 
そんな時は彼が置いていった温もりが完全に冷めてしまわぬ内に、
少しも逃さぬようにとシーツに手を這わせて彼の温度を反芻する。
 
 
それでも冷めつつあるシーツに、
ほんの少しだけ胸が痛み始めたのはいつからだろうか。
 
 
痛みと称する程でも無いのだろうが、
チクリと胸の中で刺が刺すようなあの感覚はいつしか大きな痛みに変わる、
痛みを伴って僕を傷つけるときが来るかもしれない。
 
 
そうして僕はいつの日か、
彼の脱け殻のようなただのシーツをありがたがって指を滑らせ唇を押し付け舌を這わせ、
存分に味わった肌を反芻するのだろうか。
 
 
温もりも完全に冷めてしまったただの皺くちゃのシーツに頬を擦り付け抱き締めて、
そんなふうに求める日が。
 
 
 
 
 
 
…………嗚呼、困ったな。

 
まるで僕が彼のこと、愛してるみたいじゃないか。
 
 
 
 
 
 
 
 
 



END












*************************************************************************************************
無自覚にグラハムに墜ちてるカタギリ、でした。
シーツはあの綿の肌触りの良いやつで、
グラハムの体温がなかなか冷めずに残ってるといい。
一年近く拍手に掲載していましたがお気に入りだからと言うわけではなく、
短いのが書けなかったからです orz (ほんとすいません…)










PR

2009/05/09 21:39 | ビリグラSS

<<拍手更新しました。 | HOME | ほんとにほんきで orz>>
忍者ブログ[PR]