ロマンティック (ビリグラ)
ビリグラで時間軸は今…くらいかな?
ハピネスより先に拍手用に書いていたものですが、長くなったのでこっちにUP。
さらっと、つづきからどうぞです。
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ロマンティック
僕自身の精神状態を傍から見れば何と称するのだろうか。
当てはまるだろうキーワードの数々を思い浮かべては、少女じみた思考の渦に眩暈を起こし、
解り切ったそれには敢えて触れないでおこうと、いつも内なる僕が制している。
嗚呼、毒されている。
どうしようもないくらいに。
――僕は甘ったるい食べ物が大好きでね。
安物のドーナツだとかマーケットの軒先、これまた適当に投げ売られている、嗜好品は高級品と決めている
グラハムならあまり口にしないような、着色料だらけの体に悪そうな極彩色のお菓子を好んで選ぶんだ。
グラハムならあまり口にしないような、着色料だらけの体に悪そうな極彩色のお菓子を好んで選ぶんだ。
シンプルなオールドファッションのドーナツも良いけど、ストリートの屋台で売られているカラースプレーをまぶしたパンケーキも捨てがたいし、チョコレートをたっぷりかけたクッキーにもわくわくする。
そして口に含んではその甘さに感謝し、これで補給完了とばかりに業務に没頭するんだ。
そして口に含んではその甘さに感謝し、これで補給完了とばかりに業務に没頭するんだ。
健康志向のグラハムはそんな僕を見る度に、やれ糖尿になるぞとか、間違いなくお前は将来クマになる、
クマでメガネでポニーテール、そうなったら最早どうしようも無いな、
等と憎まれ口を叩いては大仰に肩を竦めるけれども、僕の夜勤の際にはそれらを差し入れてくれるのだから、ちょっと可愛いよね。
クマでメガネでポニーテール、そうなったら最早どうしようも無いな、
等と憎まれ口を叩いては大仰に肩を竦めるけれども、僕の夜勤の際にはそれらを差し入れてくれるのだから、ちょっと可愛いよね。
気まぐれだ、と目を眇めて彼は無造作に僕の好物が入ったマーケットの袋と珈琲、
時には野菜ジュースを差し出すけれども、その気まぐれが何十回と続いているわけで。
時には野菜ジュースを差し出すけれども、その気まぐれが何十回と続いているわけで。
そう、僕は小さな女の子が選びそうなお菓子は好きなくせに、いわゆるまだ見ぬ恋だとか王子様に憧れて、
男の温もりだとか動物染みた息遣いだとか、初体験の痛みだとかを知らない、無垢で世間知らずな少女趣味が故のロマンティックな思考、そういったものが酷く苦手だ。
男の温もりだとか動物染みた息遣いだとか、初体験の痛みだとかを知らない、無垢で世間知らずな少女趣味が故のロマンティックな思考、そういったものが酷く苦手だ。
砂糖がザリザリと舌に残るような何とも言えない甘さと我侭と妄想が主成分の、薄っぺらな夢物語が苦手と
言うか、どうやら肌に合わないようで。
言うか、どうやら肌に合わないようで。
何と言うか癇に障る。
だっておめでたいと思わないかい? 馬鹿馬鹿しいにも程がある。
酷く移り気で、しかも身勝手にいとも簡単に熱を上げたり冷めたりご苦労なことだ。
僕自身は無意味な夢物語に何の興味も無い。
胸焼けしそうな色取り取りの安っぽいそんなもの、食べ物だけで充分だ。
まぁ、事実それらの菓子は非常にお安く、けれども口に含めば確かに甘い。
更に働き過ぎた脳味噌に染み渡って疲れを取るという効能が有り、しかも高カロリーで三度三度の食事を
疎かにしがちな激務の僕にはうってつけだ。
疎かにしがちな激務の僕にはうってつけだ。
恋愛だとか、誰かを好きな気持ちだけで幸せで浮かれ騒ぐような甘くピンク色をした空気や思考、やれ恋人ができただの、喧嘩しただの、果ては振られただの、それらに縛られて貴重な24時間、365日を何周期も送るのが馬鹿馬鹿しいとさえ思っていた。
そしてそれは性欲の有無とは必ずしも一致はしない。
今にして思えば僕も若い時分は、恋愛は酷く面倒な癖に女性の体が拝めれば、まぁ拝んだ先の事も出来ればそれで良いと即物的に思う時期も有ったし、実現する為にそれなりの努力を重ねて口説き文句の一つも覚えたよ。
いやはや、若さってやつだね。
Body Callingの前段階、それを割愛したくて堪らなかった。
その更に前、若さに任せてやんちゃをした更に前に――、熱を入れ上げ夢中になったけれども、あっけなく袖にされた女性がいたからかも知れない。
僕はまるでその反動のように、情熱的になるのはベッドの中だけで良いと思うようになっていた。
後腐れが無く、頭の良い女性が良いとね。
まぁ僕が言いたいのは、その苦手で嫌っていたはずの甘ったるい思考に最近囚われているということなんだ。何ともお恥ずかしい限りだね。
恋をしているのかって?
……………どうなのかな、これは。
三十を越えて少し丸くなったのかも知れないのだけど、嗚呼、まぁほんの些細なことなんだけどね、
朝でも昼でも夜でも良い、彼が、グラハムが隣にいることが酷く嬉しいと思うようになったよ。
本当に些細なことで笑っちゃうね、それこそ少女趣味も甚だしい。
彼が隣にいて、ただ話をしている、軽口でも他愛の無い話でも何でも良い、それこそ話題の映画だとか、
行きつけのバーにカクテルレシピが増えただとか、………そんなことで良いんだ話題は。
行きつけのバーにカクテルレシピが増えただとか、………そんなことで良いんだ話題は。
ただ彼が隣にいる、その当たり前の日常が酷く嬉しくて、嬉しくて仕方が無いんだ。
お腹の中が底から温かくなって満たされるような、陽だまりにいる感覚、あれに似ているのかも知れない。
好きだの愛してるだのといったものとは少し違うのかもしれないし、でも勿論、重なる部分も多いんだろう。
好きだの愛してるだのといったものとは少し違うのかもしれないし、でも勿論、重なる部分も多いんだろう。
キスやセックスよりも、僕は何より彼と話がしたい。
僕らにとってのセックスは勿論コミュニケーションツールでもあるのだけれども、熱に浮かされ求め合い、
ただ吐き出すよりも、もっと彼の目を見て話がしたい。
ただ吐き出すよりも、もっと彼の目を見て話がしたい。
喧嘩をするのでも良い、
彼の若く浅はかな、それでいて仰々しい説教を拝聴してやり、時折苦笑しながら茶々を入れるのでも良い。
それでお前は黙って人の話を聴けないのか失礼だぞと、あの綺麗な緑の目で見上げられて叱られたりね。
適当に謝る僕に、更に怒って拗ねる彼を宥めてやるのも良い。
…え?何だい? それが好きってことだって?
そんなの僕の顔を見れば解るって? そんなに嬉しそう?鼻の下伸びてる?
……………参ったな、そんなに?
でも、ただ漠然と大事で大切なんだなぁとは思うよ。
生憎彼は本当に無鉄砲で向こう見ずで、無茶でね。
幾ら心配してもし切れないし、それも馬鹿馬鹿しくなったから僕としては一緒にいる時間を大事にしたいと思うようになったのかも知れない。
彼が出撃してから帰投するまでの間、あの何とも言えない胸に巣食う嫌な感じは完全に拭い去ることは出来なくて、それでも重ねる年月は、胸のしこりが徐々に馴染んで僕の一部となるには充分な時間だった。
嗚呼違うな、どこかで諦めているのかな、覚悟もしているのかな。
僕は誰よりも彼を高く飛ばせたい、あの空の高みへ飛んで欲しいと願うのに、ぽっかりと空いてしまった
隣の空間に、いつも胸の奥がほんの少しだけ軋んだ。
隣の空間に、いつも胸の奥がほんの少しだけ軋んだ。
数時間、数日先にも彼は変わらず僕の隣で笑っているのだろうか、
ハニーブロンドと下から掬い上げるように見つめてくるグリーンアイズは僕の視界に戻って来るのだろうか、
ぶっきらぼうに憎まれ口を叩きながら、いつものようにお菓子と珈琲を携えて、
僕の隣に帰って来るのだろうか、と。
…………嗚呼そうだね、待つことには酷く慣れてしまったよ。
そして待てば待つ程、僕の隣に彼の気配を探してしまうんだ。
――ごめんね、そろそろ失礼するよ。
この後食事の約束があるんだ。
うん? 随分嬉しそうだって?
そりゃね、君…、嗚呼……ほら彼が来た。この話はまた今度、
――そうだよ、数週間振りのデートなのさ。
だから決して、邪魔しないように。
嗚呼そうだね、僕は毒されている。
ロマンティックで甘ったるい、胸の痛みに。
END
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ロマンティック:
ビリさんの惚気話。恋する三十路。…ハピネスとちと似てますね orz
カタギリの口説き文句は即物的で直接的。(理系だから)(間違った理系男の解釈)
でも慣れと経験則で雰囲気作りが上手いんだと思う。(顔も声も素敵なのですが)
グラハムの口説き文句はかなり寒いと思う……。
(でも顔と声が良いから許されるみたいな)
(しかもシェイクス●アから引用の上、ロマンス小説風にアレンジとかな)
(しかもシェイクス●アから引用の上、ロマンス小説風にアレンジとかな)
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